「保証人がいない」で断る前に──保証と見守りで単身高齢者を受け入れる賃貸経営をテーマにしたコラムのアイキャッチ

「保証人がいない」で断る前に──改正法と見守りが変える単身高齢者の入居審査

「保証人がいない」で断る前に──保証と見守りで単身高齢者を受け入れる賃貸経営をテーマにしたコラムのアイキャッチ

「お部屋は気に入っていただけましたか。では、緊急連絡先にご親族のお名前を書いていただけますか」──。入居申込書を前に、こう切り出したところで、単身の高齢入居希望者の手が止まる。書ける相手が、いない。管理会社の窓口では、そんな場面が静かに増えています。

家賃を滞納しないかどうかは、いまや保証会社が引き受けてくれます。それでも高齢の単身者だけは、最後の最後で申込書の一行につまずいてしまう。お金の心配は仕組みで解けたのに、なぜこの人たちは、まだ断られてしまうのでしょうか。

この記事では、その「最後の一行」の正体をほどきながら、2025年10月に動き出した法改正と、そこに“見守り”を重ねることで開ける、単身高齢者の新しい受け入れ方を考えます。

保証会社があるのに、なぜ高齢者は今も断られるのか

かつて入居審査といえば、親や兄弟に連帯保証人を頼むのが当たり前でした。ところが今は、家賃債務保証会社を使う契約が主流です。日本賃貸住宅管理協会の調査によれば、2023年度に取り扱われた賃貸契約のうち、実に9割超の物件で保証会社との契約が必須とされています※1。「保証人がいない」という壁は、制度のうえではほぼ過去のものになったはずでした。

それでも高齢の単身者がつまずくのは、審査で問われるものが「お金の保証」だけではないからです。多くの申込書には、家賃を保証する会社の欄とは別に、「緊急連絡先」を記す欄があります。入居者と連絡が取れなくなったとき、体調を崩して倒れていないか、万一のときに誰に知らせればいいのか──その受け皿を、あらかじめ確保しておくための欄です。

つまり、保証会社が引き受けるのはお金のリスクであって、安否のリスクではありません。「家賃は保証される。けれど、この人に何かあったとき、誰に連絡すればいいのか」。その問いに答えられないことが、高齢単身者の入居を止めている“もう一つの壁”なのです。保証と緊急連絡先は、まったく別の心配ごとだと言い換えてもいいでしょう。

現場では、この二つの壁が別々にやってくることがよくあります。保証会社の審査には無事に通った。家賃の支払い能力にも問題はない。それでも申込書の緊急連絡先の欄だけが空欄のまま返ってきて、契約の一歩手前で話が止まる。担当者としては、支払い能力を疑っているわけでも、その人を人として拒んでいるわけでもありません。ただ「万一のとき、この空欄が自分たちに重くのしかかる」という予感が、最後のサインをためらわせるのです。壁は、お金の壁を越えたその先に、もう一枚立っています。

“頼める親族”が、もういない──数字が示す構造の変化

そして厄介なことに、この壁はこれから高くなっていきます。緊急連絡先を頼める相手、つまり近くにいる家族そのものが、社会から減り続けているからです。

国立社会保障・人口問題研究所の推計では、世帯主が65歳以上の一人暮らし世帯は、2020年の738万世帯から、2050年には1,084万世帯へと1.5倍近くに増える見通しです※2。高齢者のいる世帯に占める単身世帯の割合も、35.2%から45.1%へと上がっていきます※2。高齢世帯のほぼ半分が、一人暮らしになる時代が近づいているのです。

一人暮らしの高齢者が増えるということは、裏を返せば、「すぐ連絡がつく子や兄弟が近くにいる高齢者」が減っていくということでもあります。子どもが遠方にいる、あるいは配偶者に先立たれ、きょうだいも高齢で頼みづらい。緊急連絡先の欄が埋まらないのは、その人が孤立しているからではなく、私たちの社会の家族のかたちが変わったからです。窓口で手が止まる場面がこれから増えていくのは、いわば時代の必然と言えます。

緊急連絡先が埋まらない審査は、誰の問題か

ここで、賃貸経営の現場に話を引き寄せてみます。

緊急連絡先が書けないという理由だけで申込みを見送るのは、オーナーにとっても本意ではないはずです。長く住んでくれそうな入居者を、書類の一行のために逃してしまう。かといって連絡先が空欄のまま受け入れれば、いざというとき誰も気づけないまま時間だけが過ぎる不安が残ります。断っても、受け入れても、後味の悪さが消えない──日々入居者と向き合う現場では、この板挟みが確かな重さで感じられているのではないでしょうか。

問題を少しほどいてみましょう。緊急連絡先に本当に求められている働きは、「異変が起きたときに、それが誰かに伝わること」の一点に尽きます。親族という“人”は、これまでその働きを担う最も身近な存在だったにすぎません。逆に言えば、異変にきちんと気づける別の仕組みさえあれば、埋まらない一行が持つ意味は、ずいぶん変わってくるはずです。求めていたのは連絡先という紙の情報ではなく、「気づける状態」そのものだった、というわけです。

木造住宅の縁側で穏やかに新聞を読む高齢男性の写真イメージ

改正法が示した答え──「緊急連絡先は、親族に限らなくていい」

同じ問題意識は、国の制度づくりの側でも共有され始めていました。その答えが、2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法です※3

この改正では、高齢者などの住宅確保要配慮者が使いやすい家賃債務保証業者を、国土交通大臣が認定する制度が新しく設けられました。認定を受けるための条件には、注目すべき二つの柱があります。一つは、居住支援の対象となる住宅に入居する要配慮者からの保証の申込みを、正当な理由なく断らないこと。そしてもう一つが、緊急連絡先の設定を求める場合に、それを親族などの個人に限定せず、法人でも認めることです※3

国がここまで踏み込んだ背景には、単身高齢者の住まい探しが、もはや個人の努力だけでは解けない社会課題になっているという認識があります。認定を受けた業者には、住宅金融支援機構の家賃債務保証保険を使いやすくする後押しも用意されました。要配慮者を受け入れる保証会社ほど損をしない仕組みへと、制度そのものを組み替えようとしているわけです。断らない保証会社が現れやすい土壌を、国が耕し始めたと言ってもいいでしょう。

二つ目の柱は、まさに先ほどの「最後の一行」に対する、国からの答えでした。緊急連絡先は、血のつながった親族でなければならない──長らく当たり前とされてきたその前提を、制度の側から解いてみせたのです。頼れる家族が身近にいなくても、その役割を担う受け皿さえあれば入居を諦めなくていい。法律が、そう認めたことになります。

連絡が届く仕組みを、人だけに背負わせない

とはいえ、緊急連絡先を法人でよいと認めても、一つの問いが残ります。その受け皿となる誰かは、いったいどうやって入居者の異変に気づくのでしょうか。連絡先の欄が埋まっても、部屋の中で起きた変化が伝わらなければ、備えは形だけのものになってしまいます。ここで力を発揮するのが、見守りの技術です。

私たちが提供する「デナリ・コネレーション」は、CO₂(呼吸)センサーを使った見守りサービスです。人が呼吸することで生まれる部屋の空気のわずかな変化から、在・不在や安否をそっと見守ります。カメラも音声も一切使わず、映像も音も記録しません。見られたくない暮らしぶりには、そもそも触れない仕組みです。設置は工事もWi-Fiも不要で、コンセントに挿すだけ。入居中の部屋でも、その日のうちに見守りを始められます。

そして肝心なのは、いつもと違う様子を捉えたとき、その知らせが自動的に外へ届くという点です。反応がないときには「お出かけですか」「お加減はいかがですか」と一声かけ、必要なら管理会社やご家族へつなぐ。人の記憶や巡回の頻度に頼っていた“気づき”を、仕組みが下支えしてくれます。緊急連絡先という役割を、もはや特定の誰か一人の肩だけに背負わせなくてよい。監視ではなく、つながりとしての見守りが、埋まらなかった一行を静かに埋めてくれます。

コンセントに設置されたCO2見守りセンサーと、部屋で穏やかに過ごす高齢女性の写真イメージ

保証は“お金”を、見守りは“気づき”を守る

最後に、視点を経営に戻しましょう。保証と見守りは、実はきれいに役割を分け合う関係にあります。

保証会社が守ってくれるのは、滞納や原状回復といった“お金”のリスクです。一方で見守りが守るのは、異変に気づくまでの“時間”です。この二つはどちらか一方では完結しません。発見が遅れれば、居室の傷みは進み、結果として保証会社が背負う損害も大きくなります。逆に、早い段階で気づける仕組みがあれば、入居者の尊厳が守られると同時に、金銭的な損失も小さく抑えられます。見守りは、保証と対立するものではなく、保証の負担そのものを軽くする、いわば補完の関係にあるのです。

保証会社の立場に立ってみると、この関係はいっそうはっきりします。家賃の数か月分にとどまらず、居室の原状回復や遺品の整理まで背負うことになりかねない事態は、保証を引き受ける側にとって最も避けたい出来事です。だからこそ、入居者の異変を早く捉えられる見守りが備わっている物件は、保証会社の目にも“安心して引き受けられる部屋”として映ります。オーナーが見守りを一つ入れておくことは、入居者のためであると同時に、保証を付けてもらいやすくするための布石にもなるのです。

この二枚看板が揃うと、オーナーへの説明も変わります。「高齢の方はリスクが高いので」という断り文句が、「お金は保証会社が、安否は見守りが受け持ちます」という受け入れの言葉に置き換わる。断る理由を一つ、また一つと外していけば、入居対象は自然と広がり、空室の期間は縮まります。しかも高齢の入居者は、腰を据えて長く住んでくれる借り手でもあります。頻繁な入退去に悩まされず、地域に根を張って暮らしてくれる──空室と原状回復に頭を痛める経営にとって、これは望ましい入居者像そのものではないでしょうか。

法律が前提を変え、技術が受け皿を用意した今、単身高齢者を受け入れられるかどうかは、もう“運”や“気合い”の問題ではなくなりました。仕組みで備えられる時代に入ったのです。

家賃の保証は保証会社が、安否の見守りはセンサーが受け持つという役割分担を表した図解イラスト

「ご親族の連絡先を書けますか」と問う審査から、「この方をきちんと見守れますか」と問う審査へ。単身高齢者の入居に向き合う姿勢を、そろそろ入れ替えてみませんか。

出典一覧

  • ※1 日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)第28回」(2024年)|発表ページ
  • ※2 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和6年推計)」(2024年)|発表ページ
  • ※3 国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」(令和7年10月1日施行)|制度ページ

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