入居者が亡くなった後の対応は?──国のモデル契約条項から考える、契約解除・残置物処理への備え

2026年10月13日

賃貸管理会社の担当者と高齢の入居希望者が、入居前に契約書を一緒に確認している写真イメージ(アイキャッチ)

入居者が入院先で亡くなった。相続人は分からない。部屋には家財が残ったまま、次の募集もかけられない──。国のガイドブックも、こうした大家さんの苦労から説明を始めています。[2]

見守りをつけても、家賃保証があっても、この状況は防げません。

異変に気づくこと、家賃の支払いに備えることは大切です。しかし、入院したときの連絡や手続き、亡くなった後の賃貸借契約の解除、室内に残された家財の処理は、それぞれ別の対応です。「何かあったら、この人に連絡する」という連絡先だけでなく、その先の対応を誰が引き受けるのかまで見えている必要があります。

先日、業界団体の幹部の方と高齢者の入居支援についてお話しする機会がありました。身元引受人の重要性や、実務を担う体制と費用について伺い、私が改めて考えたのは、制度やサービスを実際の対応につなげる役割分担の大切さです。

国土交通省・法務省が用意した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を入口に、入居者が亡くなった後の契約解除と残置物処理について、管理会社・オーナーが入居前から備えておきたいことを考えます。

亡くなっても、契約は終わらない

入居者が亡くなると、原則として賃借権と家財の所有権は相続人に引き継がれます。死亡したというだけで、大家さんが自由に契約を終わらせたり、荷物を処分したりできるわけではありません。相続人の有無や所在が分からなければ、手続きが進まないことがあります。[1]

国土交通省・法務省は、こうした不安が高齢者への貸し控えにつながっているとして、2021年6月にモデル契約条項を策定しました。問題は、室内での死亡だけではありません。入院先で亡くなった場合にも、契約や家財の整理は必要になります。[1・2]

ここから読み取れるのは、高齢者の入居を支えるには、孤独死の発見遅れへの対策に加えて、死亡後の手続きを進められる備えも必要だということです。

入居者の家財が残ったままになっている賃貸住宅の一室の写真イメージ

生前の2つの契約で、「亡くなった後」を任せておく

中心となるのは、入居者が生前に受任者と結ぶ2つの契約です。1つは、死亡後に賃貸借契約を終了させるための「解除関係事務委任契約」。もう1つは、契約終了後の家財の送付や処分などを委託する「残置物関係事務委託契約」です。受任者は同じでも、別々でも構いません。[2]

この仕組みは、本人の意思と契約に基づいて手続きを進めるためのものです。契約書を用意すれば、死亡直後にすべての荷物を自由に処分できる、という意味ではありません。家財の廃棄や換価は、原則として死亡から3か月などの一定期間が過ぎ、賃貸借契約が終わった後に行います。本人が「捨てないでほしい物」として指定した物は、指定先へ送ります。換価で得たお金などは費用を差し引いて相続人に返し、相続人が分からなければ供託します。[2・7]

高齢の入居者が、残してほしい大切な品に目印のシールを貼っている写真イメージ

2025年10月に更新されたQ&Aでは、管理会社が入居前の判断に使える点が明確になりました。[1・7]

  • 原則は60歳以上の単身者。60歳未満でも、推定相続人がいないなど、死亡後に連絡を取れる人が期待できない場合は活用できる
  • 既存入居者についても、単身高齢者で残置物処理のリスクが高い場合などに、本人が内容を十分に理解し、合意したうえで利用できる。賃貸借契約に特約を加えるなら、契約の変更が必要
  • 残置物処理への不安が生じにくい場面で利用すると、民法や消費者契約法に反して無効となる場合がある

居住支援法人なら、どこでも頼めるわけではない

2025年10月1日施行の改正住宅セーフティネット法では、居住支援法人の業務に、入居者からの委託に基づく死亡後の残置物処理等が追加されました。モデル契約条項の活用を基本に、担い手を制度上も位置づけたものです。[3]

ただし、居住支援法人であれば、どこでも同じ対応ができるわけではありません。この業務を行うには、法人の指定または業務変更の認可に加え、残置物処理等業務規程を定め、都道府県知事の認可を受ける必要があります。依頼先を探す際には、名称だけでなく、業務の認可、対象地域、受託条件を確認する必要があります。[4]

制度があることと、自分の管理物件で頼める相手が決まっていること。その間をつなぐ準備が、現場には必要です。

居住支援法人の担当者が、高齢の入居者と管理会社の担当者に死後の事務について説明している写真イメージ

受任者は誰にするか──利害の対立にも注意

入居前に決めておきたいことの中心は、受任者を誰にするかです。国のQ&Aは、次のように整理しています。[7]

候補考え方
推定相続人まずは推定相続人のいずれかとするのが望ましい
居住支援法人・管理業者などの第三者推定相続人に頼むことが難しい場合に想定される
家賃債務保証業者入居者と利害が対立しやすく、公序良俗に反して無効と判断される可能性がある

管理会社が受任者になる場合には、注意が要ります。サブリースなどで管理会社が転貸人(賃貸人)の立場にあるときは、受任者とすることは避けるべきとされています。そうでない場合も、オーナーの利益を優先せず、入居者(の相続人)の利益のために誠実に対応する必要があります。[7]

また、物件の管理会社が変わっても、受任者の地位は新しい管理会社に当然には引き継がれません。入居者の承諾を得て移すか、契約を結び直す必要があります。[7] 管理を受託する物件で受任者を引き受けるなら、管理契約が終わったときの扱いまで、入居前に決めておくと安心です。

「緊急連絡先がいる」と「死後を任せている」は別

この面談で伺った身元引受人の重要性を、私は「何か起きたときに、実際に対応を引き受ける相手がいるか」という問いとして受け止めました。

例えば、入院の連絡を受ける人、必要な手続きや生活上の支援をする人、死亡後に部屋の契約や家財を整理する人。これらを、1つの「身元引受」という言葉でまとめると、どこまで頼めるのかが曖昧になります。

国の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」も、身元保証等、死後事務、日常生活支援を分けて整理し、サービス内容は事業者と利用者の契約で決まるとしています。[5]

緊急連絡先に名前があることと、死後事務を委任されていることは別です。家族がいる場合にも、何をお願いできるかを確認する。専門事業者に頼む場合にも、対応範囲を契約で確かめる。肩書きより、その人や事業者が引き受ける具体的な内容が重要です。

管理会社が確認したい、5つの役割

以下は、入居前の確認に使うための整理です。全員に同じサービス一式を求めるのではなく、本人の希望や家族の協力状況に合わせ、足りない役割を確かめます。

備えたいこと主な対応先・仕組み確認する内容
異変への気づきと状況確認見守り・安否確認の運用通知後に誰が確認し、必要な対応へつなぐか
家賃の支払い家賃保証保証の範囲・期間・対象外となる条件
死亡に伴う費用対応する保険等清掃・原状回復等の補償範囲、限度額、対象外の費用
入院時などの連絡・支援家族、身元引受・生活支援の事業者等連絡の受領だけか、手続きや付き添いまで含むか
死亡後の契約解除・家財の整理死後事務の受任者権限、作業範囲、費用、処理の手順

※サービス名称だけでは対応範囲は確定しません。保険や保証は個別の約款・契約、委任する事務は契約内容を確認します。

本稿で扱っているのは、このうち最後の「死亡後の契約解除・家財の整理」です。見守りから費用への備えまでの全体像は、孤独死対策とは?賃貸管理会社・オーナーが行うべき8つの実務で整理しています。

契約書があっても、動く人と費用がなければ止まる

先の面談では、事務を担う体制と、それを維持する費用も課題になりました。これを踏まえ、私は、サービスを紹介するだけでなく、管理会社の担当者にどの作業が残るのかまで整理すべきだと考えています。

例えば、死亡後の残置物処理を頼める相手がいても、誰が最初に連絡し、契約書や必要な情報を渡すのかが決まっていなければ、その場で調整が始まります。搬出や保管などに費用がかかる場合、誰が支払い、契約に含まれない費用をどう扱うのかも確認が必要です。

そのため私は、誰が何を担い、費用を誰が持つのかを、入居前に一覧にしておくことを勧めています。項目は、この記事の最後にまとめました。

また、入居時の準備で終わりにはできません。連絡先や支援者が変わったときに、誰が情報を更新するかも決めておく必要があります。担当者個人の記憶に頼らず、引き継げる形にすることが、継続する支援につながります。

賃貸管理会社の担当者が、契約書や連絡先リストなどの引き継ぎ資料を整理している写真イメージ

見守りは、異変の把握と状況確認を担う

デナリ・コネレーションが担うのは、孤独死の発見遅れを防ぐための見守りです。CO₂濃度の変化を手掛かりに、専任スタッフがアラートを確認し、必要に応じて入居者へ電話。確認結果を管理会社へ共有し、次の対応につなげます。[6] 異変の通知後、現地確認を誰が担うかについては、見守りの「駆けつけ」は誰が担うのかで詳しく書いています。

寝室のコンセントに設置されたCO₂見守りセンサー「デナリ・ボッツ」の写真イメージ

CO₂データだけで死亡や無事を確定するものではなく、救命を目的とするサービスでもありません。また、見守りによって、死亡後の契約解除や残置物処理の権限が生まれるわけではありません。そこは別の備えが必要です。

実際に、デナリの見守りを導入している管理会社のアミックス様では、亡くなった後の備えとして、死後事務委任の仕組みもあわせて取り入れています。アミックス様は、この2つを「両輪」と位置づけています。異変に気づく仕組みと、亡くなった後を引き受ける仕組み。どちらか一方だけでは、高齢の入居者を安心して受け入れる体制にはなりません。

異変に気づく人、状況を確認する人、その先の事務を引き受ける人。それぞれの役割をつないでおくことで、管理会社が対応のたびに一から調整する負担を減らすことを目指します。

入居前に決めておく5つのこと

管理会社としては、少なくとも次の5つを、入居前に一覧にしておくことを勧めます。

  • 1. 最初の連絡先:異変や死亡を知ったとき、最初に誰へ連絡するか
  • 2. 対応の責任者:契約解除と家財の整理を引き受ける受任者は誰か
  • 3. 対応時間と不通時の連絡先:夜間・休日や、連絡がつかないときに次に誰へつなぐか
  • 4. 費用の負担者:搬出・保管などの費用を誰が負担し、契約に含まれない費用をどう扱うか
  • 5. 引き継ぐ情報:契約書、指定残置物のリスト、緊急連絡先など、受任者に渡すもの
入居の日に、管理会社の担当者が高齢の入居者とご家族に鍵を手渡している写真イメージ

高齢者の入居を支えるために、管理会社があらゆる支援を自社で抱える必要はありません。必要なのは、本人の意向を踏まえ、誰が何を引き受け、どこで次の担当へつなぐのかを明確にすることです。

モデル契約条項は、そのための重要な手段です。そこに、実際に動ける担い手と継続できる費用・体制を組み合わせる。「高齢者だから不安」で止まらず、自社の物件で何を備えれば受け入れられるのかを、一つずつ具体的にしていきたいと考えています。

デナリ・コネレーションの見守り・安否確認の運用については、サービス紹介ページをご覧ください。

出典・参考資料

  • [1]国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」掲載ページ(ガイドブック第2版・Q&Aの2025年10月更新を確認)|掲載ページ
  • [2]国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項の活用ガイドブック」第2版、2025年10月|PDF
  • [3]国土交通省「住宅セーフティネット制度」改正法施行・居住支援法人による残置物処理|掲載ページ
  • [4]国土交通省「残置物処理等業務規程の作成・認可の手引き」2025年6月、冒頭・問1|PDF
  • [5]関係府省「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」2024年6月、第1・2(対象)、表1|PDF
  • [6]デナリ・コネレーション公式サービス紹介|掲載ページ
  • [7]国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項に係るQ&A」2025年10月更新、QA1〜7・16・18・19|PDF

資料確認日:2026年10月6日。面談部分は、竹本による面談内容の要約と、その内容を踏まえた考察です。発言の逐語引用ではありません。

※本記事は一般的な制度の概要および実務上の留意点を整理したものです。実際の個別物件における契約締結や特約の付与、法的手続きの実施にあたっては、弁護士や司法書士等の専門家、または管轄の行政窓口へご相談ください。

本記事は、2026年7月21日に公開した記事を全面改訂したものです。

この記事を書いた人

竹本 光伸

日伸貿易株式会社(デナリ・コネレーション提供元)代表取締役